くまとゼリーのこと
はるな


わたしのなかに何が入っているか、まだわからないんだよ。
くまと、街(コンクリートとビル)、たばこ(とたばこの煙)、「いくつかの」、と、「あらゆる」。
出たり入ったりして去っていく人びとと花たち、「音ってなにでできてるの?」て、透きとおった質問。
空気の振動でできているんだよ、じゃあ振動ってなにでできてるの?振動はねーそれは、存在どおしのかかわりあい?
「存在ってなにでつくられてるの」そんな、
わたしはあなたがいなかったら今ここでわあわあ泣いているよっていう質問ばかり気軽に投げてきちゃってさ。
気軽っていえば、きみたちがつかうプールのビニールみたいな。あのぺかぺかした色をみてよ!雨ばっかり続いていやになっちゃうよね、ていう足元もぺかぺかのビニールブーツ、わかってるよ。誰も気軽に生きているわけじゃないし、ゴムボールだってちゃんと重たい。わかっているよ。世界がそんなに重たくないこと。でもわたしは、わたしのなかに何が入っているか、まだわからないんだよ。

なんの意味もない名前をあげようね、と思っていたむすめ、名前のとおり育ってまぶしい。
悪いことをしている気持がする。解決したとおもっていた問題がふたたびあらわれて、親しみをこめて笑ってくる。
なんども円のふちをまわってきて、はっと気がつくたびに最初の場所に立っている。走っていなかったのかもしれないと思うと、悪いことをしている気持がする。
ず〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っと、いるのが悪いことと思っていて、それはなぜか考えていた。考えたり、生きたり、話したり、聞いたりして、眠ったり目覚めたりして、大丈夫と思ったりもして、でもやっぱりいいと思えない。
心のなかに飼ったやさしいくまたちに、大丈夫大丈夫と言わせて、くまたちはもうぼろぼろになってしまった。すぐになってしまった。やさしかったのに、疲れさせてしまう。でも、心のそとにだすと、ますますすぐに死んでしまう。死んでしまうもののためにたくさん詩を書いた。ほんとはそういうものたちと丸いテーブルをかこんできれいなゼリーを食べたいんだけどな。

ところで順調に6月がおわり、いつもどおりならまた夏がくる。夏ってなにもおぼえてないから好きで、最初から思い出みたいで良い。どっちみちどうして良いかわからないのだし、街にでても良いのかもしれない。部屋をでて、街をでて、体からもでていくから、そしたらくまたちもすこし眠れるなあって考える。


散文(批評随筆小説等) くまとゼリーのこと Copyright はるな 2019-07-05 10:36:51
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