病葉堆積
るるりら


遊びをせんとや生れけむ
けむけむ遷都のものがたり
たりたりたりぬかたりてるか
あまいみずを きよめたもう

こどもたちが むかしから伝わる唄でお手玉遊びをしている。
おとなたちは 同じ歌を労働歌として歌っている。
かれらは、誇り高きインシュリン族の民である。
かれらはランゲルハンス島で生まれてこのかた
常に降る蜜のような雨が止むのをみたことがない。
甘露なる川は 土壌を肥やしもするが腐らせもする。
川が清さを保っているのは
インシュリンの民が 雨を生成し世界を清めているからなのだ。
かれらの力で、いつもは 清く流れる河が
いちど 氾濫すると、土壌に病をもたらしながら 
激しく蛇行し荒れ狂い すべてを破壊し 
美しい自然体系はすっかり機能しなくなるのだ。

川が氾濫したあと 水位が下がると
おもいがけない歴史を垣間見ることがある。地層だ。
かつて海を悠々と泳いだ古代魚が 地層の中で生きている
恒星と通信していた植物の物語が 活きている
すべての歴史の上に 甘い雨は降り続け、浸食する。
そして甘露の雨がすべてを育んでいる。

インシュリンの民は 今日も甘すぎる雨を清め
今日も すべての生きとし生けるものの住処たるこの地を
神のように統治する都人のことを想うのであった



※ 冒頭の一行は、梁塵秘抄です。
※ 即興で詩を楽しむサイト 即興ゴルコンダに 題は「わくらばたいせき」と読むのだそうです。こうだたけみさんが出題されました。
http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=6005917#12814622


自由詩 病葉堆積 Copyright るるりら 2019-06-25 09:05:41縦
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
るるりらの 即興ゴルゴンダ