暗闇と明かり
ハァモニィベル
その日、暗闇はすべてを覆い尽くした、と思っていた
あらゆるモノが皆、暗闇を背負い
その中で暗闇の底を探すのだ、と。
しかし、静寂は無限だった。
暗闇は、その静寂に無限に包まれていた
或日、暗闇の底に、雨が降っていた
闇を縫う祭のように
真夜中に 長く 烈しく 降臨した。
静寂は、やがて、その後に来た
月が一つ静かに見ていた
見開いた明かりは、何処までもただ静寂だった
静寂の数を
換算
(
かぞ
)
えてみた
百年は数え切れない長さだった
蓄音機がCDになりUSB、SDに変わる
何万年か前、凍った河に沿って歩いた
樹や草も凍っていた
何もかもが、大理石よりも固く凍っていた
真実もすべてを一瞬で凍りつかせることがある
温もりがそれをふたたび一瞬で融かす日まで
遠方から来る友のように、太陽が雲を朝の色に染める
隠れん坊でしゃがんでいる場所を鬼が次々に暴くように
朝、ひとは、見つかった子供のように目ざめる
上半身を起こして
つべこべと果てしない現実を生きていく
海のような欲望にのって
寂しさを満開にした花が幾重にも闇の中で凍りつき
哀しみの結ぶ実が陽射しに融ける日を待っている
ひとひねりに捻り殺されるのが救いである程の
短い蝋燭の、過酷な夢の中でさえ
まるで生きているような、
光の濃度が増してゆく
閑
(
し ず
)
かな灯りでせめてありたい
自由詩
暗闇と明かり
Copyright
ハァモニィベル
2019-06-23 00:28:36