しおからうどん/即興ゴルコンダ(仮)投稿
こうだたけみ

まず大さじ24杯分、つまり約2合のしおを鍋に入れ、蓋をしっかり閉じて持ち、平日朝8時の電車へ乗り込みます。川と川に挟まれ孤立した駅付近での異音の確認を行なった関係で、現在約19分の遅れをもって運行しています。薬の副作用による更年期障害で滝のように汗をかくうちに、殺気立つ女性たちの長いながい髪の毛のように湿り気を帯びる鍋の具。飯のつぶをくっつけた駅では50%まで下がる乗車率がもたらす安堵のため息を一つひとつ捕まえては両の手のひらで叩く。平たく伸びたものを蓋の隙間から鍋の中へ、鍋の中へ。コンコンコンと三度のノックでゲートは開かれます。私-おはようございます電車が遅れているので少し遅れます申し訳ないです-おはようございます了解です-上司。毎日まいにちホウレンソウの緑の-線-の上をたどりつづければいつか交通妨害になるのはわかっているのに五分前に到着できたのだからよしとする気の緩み。から漏洩する情報の足跡を律儀に消してゆくモップの先みたいな手つきでとぐ。水は、濁らない。鍋底をさっと撫でたのち10分蒸らして蓋を取る。このようにしてしおからできるうどんは誰も作りたがらないらしい。だってほら、しおからいから。喉が、からから。


自由詩 しおからうどん/即興ゴルコンダ(仮)投稿 Copyright こうだたけみ 2019-06-20 22:06:53
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