五月が過ぎて
帆場蔵人

サンザシの花咲き
山椒の粒、匂いはじけ
街灯がポッポッと灯り
夕餉の匂いとけだす
懐かしいその匂い
五月が過ぎてゆく

帰る家もなく
靴はすり減るばかり
腹はぐぅぐぅなるばかり
月も星も食えやしない

歌ってみたら
石が投げられ
当たりに行けば
今宵の宿は病院か

あぁ、しかし、明日はどこ

サンザシの白き花、懐に
捧げるひともいやしない五月

実山椒の佃煮入りの握り飯ひとつ
腹にいれ歩いてた六月がまた来る










自由詩 五月が過ぎて Copyright 帆場蔵人 2019-06-19 23:31:03
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