トモダチのカレシのイヌ
DFW


で、あずかったトモダチのカレシのイヌがしっぽを揺らすたびに部屋の椅子が倒れて コップが割れて床が濡れて
じょじょに狭いベッドに追い込まれてる

開け放した窓の外は暗いすごく

読み書きをあきらめたら 夏の町のこえがして まるい月がのぼってる

投げ込まれた煙幕のような毛深さに埋もれて顔じゅうがよだれに満ちみちて
わたしの汗ばんで蒸れた大小いくつかのつけねをくんくん嗅ぎまわる

で、さっきくびすじから抜かれた血が 一滴 夜空に浮かんで舞う
ことしはじめて蚊に刺された夜の深さを暴こうとする

ピンかネジをひとつ抜かれたようにゆるむからだが夏に崩れだす夜の深さを

ねえ、さっきから聞いてる?



自由詩 トモダチのカレシのイヌ Copyright DFW  2019-06-18 00:45:51
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