だいたいそんなもの
帆場蔵人

そうして雲海は焼け落ちて
さよならすら許さない晴天

山を下ろう沢の流れに沿って
箱庭みたいな町に足を踏み入れて
あの角を曲がりこの角を曲がり
パン屋で焼きたてのフランスパンを
その先のコンビニで新聞とミルク
顔も知らない政治家の立看板のある
辻を右に曲がれば、海だ

年寄り犬は今日も欠伸みたいな
鳴き声でリードを握る人は
昨日と違う、気づいてる?

ほんの少しずつ傾いてゆく
何かが溢れ落ちてまた水平になる
あの海の水平線みたいに揺るぎない
日常なんてきっとないのだ

フランスパンと新聞とミルクを
抱えて通っていくこの日常も

焼け落ちた雲は波間にもみえない
さよならすら許さない晴天だ

なのに水平線が揺らぐほど
バターを買い忘れて後悔するのだ
そんなものだろう


自由詩 だいたいそんなもの Copyright 帆場蔵人 2019-06-05 19:24:16
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