ハコのナカ
ナンモナイデス


月の光の中では
命が停まる
箱を持った男が一人
長いすに腰掛けている
男は僕にプラグを貸して
ほしいという
ちょうど予備バッテリーを
持っていたので
「これどうぞ」
と手渡すと
男はまるで精気でも
ぬきとるように
電流を吸い取った
男は箱のふたを開け
手をそっと
その中へ
差し入れた
「どうです」
「さっき雷がすんなり
 落ちたでしょ」
「見知らぬ女に
 落ちたんですよね」
それは
《生き残された心臓》
だった
男はすでに動画サイトに
《その現場》を
アップしたと言う
移植医からのメールが
数件ボックスに
入っていた



散文(批評随筆小説等) ハコのナカ Copyright ナンモナイデス 2019-06-04 13:52:37
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