午睡の刻
帆場蔵人

窓から
射しこむ
ひかりに揺れる
小さな寝顔のうえで
未来がうず巻いている

シエスタ
君は宝島を見つけたのか
シルバー船長や
オウムのフリント
うず巻く海原を越えて
高らかに笑いながら

シエスタ
君は夜明けを迎えて
人を救い人に救われ
愛し愛される英雄に
なれるだろう

シエスタ
君は大人になって
称賛と勝利を浴びて
絶望も挫折も一時の
スパイスでしかない

引力ですら君を止められはしないし
その歩みはたくさんの花を産む
ガーベラ、ニゲラ、カスミソウ
アネモネ……枯れた花も輝いて

でも、明日は当たり前に残酷で
夢のまた夢

窮屈に背中を丸めて
一山いくらになって
一山いくらの缶詰めで
飢えを満たし満たされず
蒔いた種は奪われて
ひとり眠る夢のまた
夢のなか
この
揺りかごを懐かしむ
明日があるのかもしれない

窓から
射しこむ
ひかりに揺れる
ちいさな寝顔のうえで
未来がうず巻いている
ただ祈っている
君が眠るとき
その寝顔に
ひかりが
射すことを
シエスタ
したたかに
でもやさしい
うたたねの音いろが
うず巻き続けることを
午睡に微睡む君は未来へと
逆巻いている、シエスタ


自由詩 午睡の刻 Copyright 帆場蔵人 2019-05-28 02:34:05
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