天井と天丼
こたきひろし

夜中に目を覚ましてしまい
それから朝まで眠れなかった

夜が明けた頃
カラスが鳴き出した

そのぶきみな鳴き声に
何だか不吉なものを感じた

以前
道に放置された猫の轢死体の内蔵を
食べている姿を見た事がある
真っ黒い鳥が

通勤の途中に車で通りかかり
遭遇してしまった
一人ぼっちの朝食でした
邪魔しないように避けて走り抜けました

そんな事を思い出しながら
ぼんやりと天井を見上げてたら
いつの間にか気づかない間に
天井に大きな染みが広がっていました

そして間もなく
とんでもない現実が目前に起こりました
天井に広がっていた染みを突き破って
カラスが部屋に入ってきたのです

カラスはあろうことか
寝ていた私の上にとまって羽をやすめました
そのとき運悪く
私の上に布団はかかっていませんでした

仰向けに寝ていた私の心臓の上辺りにカラスの爪が
刺さりました
もう生きていられません

私の体から血が噴水のようにのぼりました
カラスはその鋭い嘴で急所をつついてきたのです
もう
死ぬ以外方法は見つからなくなりました

たかが一羽のカラスに私の内蔵は食べ尽くされてしまいました

私の大好物は海老天丼なのに
もう食べるチャンスを失いました

残念です


自由詩 天井と天丼 Copyright こたきひろし 2019-05-25 06:11:06
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