膝の虚(うろ)
帆場蔵人

まだ、崩れていない膝がふるえている
わずかにたわみ、重みにたえているのか
生きてきた時間といま生きている時間に
ふるえながらも踏みだし、よろめき
それでも倒れない、屈するたびに
なんどまた伸ばされてきたのか

時に血に塗れて、己の血か、誰の血か

長い歳月をたえてきた樹木のようで
細く、だが強かに根を張り続けた足

動き続ける膝には時間にほられた
虚がある膝蓋に閉じられた深い虚

いつか骨となりすべてから解き放たれる
そのときまで膝は虚を抱えてふるえてのびあがる


自由詩 膝の虚(うろ) Copyright 帆場蔵人 2019-05-22 00:04:57縦
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