十三夜月のくるぶし/即興ゴルコンダ(仮)投稿
こうだたけみ

右手でくるぶしを握り左手で靴を掴む。脱ごうとするが脱げない。今度は両手で引っ張ってみる。でも脱げない。を、繰り返すエストラゴンあるいは弟が叫ぶ。どうにもならん! いやそうかもしれん、まあ考えてみろ。と言っては一人、最後の瞬間を夢見るヴラジーミルまたは兄。トイレはどこだ。

ねえゴドーは来ないよ。まだ一幕までしか読んでいないけれどきっと来ない。じゃなきゃ「ゴドーを待ちながら」なんてタイトル付けないでしょ。そうね学生の頃に読んだときは退屈でたいくつで遅々として読み進められなかったけれど今はどう?

「わからないことがわかった」と柄本明は言った。息子二人は、わからないからわからない、のままのようだったけど。映されなかった本番の舞台。二人は化けたのだろうか。にいちゃん緊張するよぅ。うるせえな。素知らぬ顔で柏手を打つ父。父ちゃんって偉大だね、伊達に乾いてないよ。

こわいけどたのしい。よくいうでしょ、舞台には魔物が住むって。
ほら月が出た。
まもなく、二幕の幕が上がる。


映画「柄本家のゴドー」観賞記
参考:サミュエル・ベケット『ゴドーを待ちながら』(白水社、白水uブックス)


自由詩 十三夜月のくるぶし/即興ゴルコンダ(仮)投稿 Copyright こうだたけみ 2019-05-20 00:06:28
notebook Home 戻る  過去 未来