[:Modern Jesus
プテラノドン

Sと二人、町外れの森の前まで自転車で来た。
昼間、遠くで立ち上る煙を見つけたあいつに持ちかけられて、
ここまで来たのだ。
アイツは自転車から降りると
取り憑かれたように煙が浮かぶ方角、
藪の中へと駆け出したのだった。

不法投棄。古く、未知なる背景、
異様な誰かの軌跡、
ーそれを知ったところで何の役にも立たない。
もしくは偶然の産物か、
ー荒屋の前に置かれたドラム缶から煙が上がっていた。
Sは中を覗き込むと、ぶつぶつ呟きながら
ドラム缶を蹴倒した。
その拍子に
焼け焦げた石ころと、拳ほどの黒い塊が地面に転がった。
なんだよそれ、と訊くと
「心臓だよ!」とSは声を張り上げてから笑い続けた
ーコイツが燃やしたんだな!そう思えた瞬間、
ぼくはうずくまった。
からだのなかの鼓動を聞くために。
でも、ほらみろ!自分の音なのか分からない。
心配して駆け寄ってきたSは、
「大丈夫か?」とぼくの肩に手をかけた。
口のまわりに黒い肉片がこびりついていた。
ぼくは卒倒した。漏らしちゃなかったが目覚めたのは夕暮れ。
ライトをつけた旅客機が飛んでいく様を
視界から消えるまで追い続けた。
その色彩、その轟音!ぼくは幸福感に満たされ
自分の魂をさぐり当てた気分。

それから、Sに言われた通りにぼくは
どうにもならない糞ったれな時は、道端の石ころを
持ち帰るようにしてきた。

「準備完了!」

あとは心の底から
世界をにらみつける日を待つだけ。
そして魂が口にする、その一言

絶望


自由詩 [:Modern Jesus Copyright プテラノドン 2019-05-15 18:22:12
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