妻へ
花形新次

二十三のときに出会って
二十四で俺の子を身籠った

翌年生まれた子は自閉症で
俺はあわてふためいて
子供の将来を悲観し
わめき散らしたけれど
おまえはただ
「それでも私の子に変わりない」と
静かに言いはなった。

それを聞いて
ただ恥ずかしくて
うつ向いたまま
涙を流したのを覚えている

おまえには
もっと自分を楽しむ時間があったはずだか
そのほとんどすべてを
俺が奪ってしまった

おまえは、息子の施設の友達相手にも
まったく分け隔てなく接することが出来た
それは自然そのもので
少し顔をひきつらせながら善人を装う
俺なんかとは全然違うものだった

おまえはかなり凄いんだぜ
俺なんかでは決して真似できない人間
もっともっと人間として上等に出来ているんだ

そんなことなかなか言えやしないが
俺が死んでから何年かして
あんたの旦那、こんなこと言ってましたよって
誰かから伝われば良いかなって思う

本当に立派な人ってのは
目立たないところで
自分に与えられた使命を
こつこつやり遂げようとしているのだ

先ずは自分の生活に真正面に向き合い
出来ることからやる、やりきる
その過程で溢れ出てくる言葉以外、
誰が耳を傾けるだろう
それを詩と呼ぶなら呼べばいい

今のおまえたちはイメージの中での挫折を
リアルな挫折と勘違いしただけに過ぎない

じじいだって、ばばあだって
関係ない
ただ、子供なんだ、子供

そんなおまえたちを
俺はクソ自称詩人と呼ぶ

まったく存在意義を感じない
クソもクソの大クソ自称詩人

おまえらの薄っぺらな
「私理解して」自称詩なんか
東スポの風俗情報よりも価値がない
心に引っ掛かるものが何もない
なーんにも、ゼロ、ナッシング

今すぐ止めろ、ゴミが









自由詩 妻へ Copyright 花形新次 2019-05-14 21:43:03
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