廃園の子どもたち
もとこ

しにたい

しにたくない

しぬしかない

花占いのように繰り返される
私を内側から溶かす呪文
唱えるたびに増えていく
細くて長くて赤いライン

決して消えない心の傷が
刻印として手首に残る
それは誰の罪なのだろう
どうして私が背負うのだろう

(分かっているでしょうに!)

雨の夜はえいえんへの扉
開けたら今度こそ戻れない
あの人に向けて放った矢が
なぜか私の胸をつらぬく

幼い頃の記憶は曖昧で鮮明
痛みだけが結晶として残る
草むらの中から見上げた空
それを覆い隠す大きな影

いきたい

いきたくない

いきてやる

花占いのように繰り返される
私を内側から支える呪文
唱えるたびに大きくなる
胸の奥底にある暖かい光

取り戻すことができないなら
作り直すことが不可能なら
私は荒れ果てた庭の隅に
小さな種をひとつ植えよう

むりだよ

むりじゃないよ

むりでもいい

たとえ芽を出さなくても
カラスがほじくり出しても
日照りに枯れてしまっても
何度でも種を植え続けよう

(あの人に復讐するために?)

(ちがうよ)

(私の不幸に復讐するためだよ)


自由詩 廃園の子どもたち Copyright もとこ 2019-05-11 18:39:11
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