幕間の燐光に
由木名緒美

大気の継目
深い呼吸に上昇し
仰げば次元の小径 
真鍮の足跡

蟻となり纏った視野は日輪の槍に射貫かれ
せせらぎは大木に流れを受容される
私は硬直した椅子の背となり空間に浸る
それは賛歌の一音節の滲み
捲られた楽譜の摩耗する微音

広大な草原は観念の蔓草に絢爛し
美酒は寛容な甘さで頭に降り注ぐ
名付けられた胸は不可知の重み
震わせた裸体はこの骨の主か
貴方の灼熱の声音か

在ることが奇岩となる均衡に
眩暈は虹となり比率を浸透させていく
溢れる弦は言葉を忘れ乱舞し
なんという狂暴な代弁者!
荒れ狂う熱情を掲げ持つ

それは夢の抜殻
やさしい体温の衣擦れに潜んだ
密約の饗宴
あたたかな揺り籠を這い出でて
開かれた扉の閃光の眩さ

終幕は開幕に逆巻かれ
照明に捧げる心臓に焦れる
幕間の子守唄
躍動の無音に瞼を休め
物語の再興は静かに目覚めの時を待つ


自由詩 幕間の燐光に Copyright 由木名緒美 2019-05-09 02:08:31
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