少年
橘 紫苑
少年が絶望を知るには早すぎた
下駄箱の中のパン屑 やせ細った体
一人ぼっちの登下校 あざだらけの顔
踏みつけられて突っ伏した地面から見上げた林間学校の夜空 ネオンライトのない
その自らで輝く光強さと空の広さは
少年を追い詰めるようにちっぽけさを
知らしめた
流れ星が泣いていた だから彼も同じように泣いた 一等星の眩い光が心を焦がすようだった
ネオンライトに星がかき消された虚像の街で
小洒落たスーツを着た青年が
寂しげな背中姿で空を見上げていた
かつての少年は大人になり
この街の大人は欲望まみれの幼い少年だった
自由詩
少年
Copyright
橘 紫苑
2019-05-08 21:14:59