風の巣
ただのみきや
ちいさな手がタンポポを摘む遠い日だまりに
開けられないガラス壜の蓋を捻じる
地平は終わらないラストシーン
エンドロールもなくただ風だけが映っていた
たわわに飾られた花籠に果実のように豊満な
蕾ひとつ女の顔
宝石箱で魚たちが跳ねた夜
内側から裂けるように虫に食われて
砂となり流れて落ちる存在は非在へと
捻じれ縊れたひとつの器
やわらかな虚無の結ぼれと
戯れる言葉は肢体となって
秘密には口笛のような思惑がある
捨てられた宝くじを誰が顧みなくても
花見の宴が夢であっても現であっても
降りて来た蜘蛛を頭に乗せて笑う少女がいる
《風の巣:2019年5月3日》