わたげ
ふじりゅう

寝っころがってばらまけて
害虫に食べられて
とびでたら小さな背中
道でふまれた

ふわふわ浮かんで
どこへゆくのわたげ
命をそまつにしないで
戦わなくていい
きれいな手のまま大好きな貝がらを
そっと包んだままのように
いてほしい

渚で水あそびした濁りのない声は
空梅雨の晴れやかに負けない紐解きは
卒業アルバムのかたほとり

うしろ振り返れば
足跡も記憶の中
つまらないため息に
惑わされないで

ふわふわうかんで
どこかへゆくわたげ
命をそまつにしちゃだめ
戦わなくてもいいから
恥ずかしくても
逃げ出しても
夢心地でいいから

寝っころがってばらまけて
青虫に食べられて
とびでたら小さな背中
踏んづけられた

大丈夫だなんて軽はずみな
言葉二度ときけない
巣食う害虫はもう払えない
美しすぎる貝がらだけが部屋に遺されている

ふわふわ浮かんで
どこへゆくのわたげ
戦わなくていい
きれいな手のまま大好きな貝がらを
そっと包んだままの、
無くした君のように
いてほしい
どうか命をそまつにしないで
どうか命をそまつにしないで
どうか命をそまつにしないでね
空をゆくわたげ


自由詩 わたげ Copyright ふじりゅう 2019-05-02 16:09:22
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