青い窓 ―平成もあと二日―
服部 剛

五反田駅構内で
アジアの青年三人の、ひとりは呟いた
――JR
僕は足を止めて、質問した
――JR?
続いてほほ笑み、尋ねた
――ユア、チャイナ?
彼らは不揃いに小さく、頷く

――グリーントレイン、山の手ライン?
――イエス、イエス
――ディスエスカレーター、アップ
上を指さす僕に連結して、
エスカレーターをついてくる
背後にもうひとりの声が聞こえる
――ナイスガイ…
日頃三枚目の僕は
少々照れて、ふり向けず

ふたたび左を指さし
――バイ、チケット、プレイス&
みたび右を指さし
――ザッツエスカレーター、ダウン
  ゴートゥープラットホーム

――サンキュー ×3
  (握手 ×3)
――エンジョイトラベル、シーユー

照れたように、嬉しいように
頷く三人
さっと一度ふり返り
片手をあげて、去りゆく僕

五反田駅の外に出て
歩道橋から目に映る
まばらな移動の人の群れ
街の上にひろがる
やや濁り気味に青い、五反田の空

今日も僕は、立ち止まり
息を吸ってはふー…と吐く

反省だらけの日々のなか
もし、幼な子の心を生きるなら
一期一会の場面にふれる
この胸に、青い空の窓は開く


――エンジョイトラベル、シーユー
――サンキュー













自由詩 青い窓 ―平成もあと二日― Copyright 服部 剛 2019-05-01 12:59:26縦
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