歴史
もとこ

長い階段をゆっくりと
転がり落ちていく乳母車には
誰も乗っていません
あなたたちが見たくないと
目をそむけたから
あの子は最初から
いなかったことにされました

だから
母の悲しみも
ありませんでした
最初から
誰も
いませんでした

恥知らずな
あなたたちが見守る中
ただ
空っぽの乳母車だけが
長い階段をゆっくりと
終わりなく
いつまでも
転がり落ちていくのです


自由詩 歴史 Copyright もとこ 2019-04-30 18:32:36
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