弥生から皐月の
AB(なかほど)

最後の花びらが
ついさっき
昨日にとけて
待っていたはずの人も
終に

花びらになって散ったか
なんて
立ち上がるともう
ちゅうりっぷも
花菖蒲も
夏へ向かって
伸びをしている

かの薫をはらむ風
を感じている
感じて生きているのと
元気な頃の
母の声がする


向こうへ旅立つのか
帰って逝くのか
四十九日の意味を
野辺の人に
ひとつふたつと
問いかけて
野薔薇の人にも

空へ消える
天に昇る
残る記憶を
感じて生きてゆく
空から降る声にも
清しい
瑠璃の色香にも



さいごのはなびらが
ついさっき
きのうにとけて
まっていたはずのひとも
つい に

はなびらになってちったか
なんて
たちあがるともう
ちゅーりっぷも
はなしょうぶも
なつへむかって
のびをしている

かのかおりをはらむかぜ
をかんじている
かんじていきているのと
げんきなころの
ははのこえがする


むこうへたびだつのか
かえってゆくのか
しじゅうくにちのいみを
のべのひとに
ひとつふたつと
といかけて
のばらのひとにも

そらへきえる
てんにのぼる
のこるきおくを
かんじていきてゆく
そらからふるこえにも
すがしい
るりのいろかにも


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五月まつ花橘の香をかげば

      昔の人の袖の香ぞする

        古今和歌集 (伊勢物語第六十段)











自由詩 弥生から皐月の Copyright AB(なかほど) 2019-04-27 18:14:17
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