私じゃないもう一人の私が
こたきひろし

私じゃないもう一人の私が
私が眠る頃を見計らって枕元に現れる

私じゃないもう一人の
私の顔色はいつもわるくて
薬の袋を手に持っている

私じゃないもう一人の私は
薬の袋から錠剤を取り出して口に入れようとするから
水もいっしょに飲みなよ
もう一人じゃない私が言ってあげると
汲んできてくれよ
と言われた

私はこれから眠るところだから
自分で汲んできて
と答えると
私は君からいっときも離れられないから
いっしょに行ってくれ
と言われた

そうなんだ
でも私は眠くて仕方ない
起きられないよ

するともう一人の私は言った
私の体の病気は
君の体の病気
君のこころの病気は
私のこころの病気でもあるんだ

ほっとけないよ
お互いわるくなっていくけどいいの

下手をしたら
眠ったきりそのまま覚めなくなるかも
しれないよ

それでもよかったら
眠りなよ

それでもよかったら
どうぞ

今夜は月光が美しいし


自由詩 私じゃないもう一人の私が Copyright こたきひろし 2019-04-27 07:50:07
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