我が世代
メープルコート


 明け方の応接間で一人、壁に漂う船を見ている。
 日常の埃にまみれた心に壁際のアロマが沁みこむ。
 軽めの葉巻と淹れ立ての珈琲。
 この部屋の壁一面にも時代の匂いが沁み込んでいる。

 癒しを求める心と刺激を求める心が交錯している。
 何者でもない自分は何者なのか。
 真っ白な世代。
 出来る事といえば、無口を貫く事だけだ。

 経験が空しく散ってゆく。
 今の青年達にかけてやる言葉すらない。
 優しさと厳しさの不調和。

 無口のくせに相手に求めてはいけない。
 そうして歴史の逃げ道を探す中年世代。
 そんな気持ちの悪い大人が一人、漂う船に思いを馳せている。
 


自由詩 我が世代 Copyright メープルコート 2019-04-27 04:37:54
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