真実はやさしさの欠片もなくて
こたきひろし

普段から優柔不断の私は一見優しく思われるかもしれない
だけど私と言う人間を支えているこころの仕組みは
いたって冷淡である

たとえ熱を加えられてもその構造は伝わりにくいので
温度が上がらないのだ
自分の内部から発熱する要素にも欠けているから尚更だ

しかしそれはある意味純粋なのかもしれない
純粋で無垢ないきものは裏を返せば環境に感化されず汚染されないと言うこと
かもしれない

そしてそれは物を書いて表現したいという欲求の強い自分にとって
かなり性能の高い武器になっていた

私は芥川のいちれんの作品を愛していて
特に「地獄変」にはいたく共感させられた
主人公の絵師は芸術家の極みであるとさえ思えた
彼が一つの作品を完成させる為にした行為は人として
到底赦されるものではなかった
自分の芸術を手に入れる為に我が子を犠牲をにすることに何の躊躇いも持たなかったのだ

そしてその作品の完成させた後に彼は人間性を取り戻し、自分のしたことにおそれに打ちのめされて
自らの命を絶った

勿論私ごときはそんな芸術家の高ぶりなど持っていない

しかしそれを少なからず希求する意識が私の根底にあるからか
闇雲に書いているのだろう

私はやさしさの欠片も持たないが
沢山持っているように見せかけている

凡人はそうしていないと生きるのに
不便だから


自由詩 真実はやさしさの欠片もなくて Copyright こたきひろし 2019-04-26 06:06:44
notebook Home 戻る  過去 未来