大きな川を渡る
相田 九龍

部屋を飛び出して泣きたくなった群青の日
煙草の煙が目に沁みた
か細くよじれた心
いつかこれも、遠い昔の出来事になる、とそのときは思っていて
忘れたいことだらけだから、忘れちゃいけない日々
たどり着いたここが、今、いつか

僕は少し一人で、少し、一人じゃない
泳いでいるのは雲
やわらかな、新しい道
まだ少し、ハリガネみたいな心

ねぇねぇ、って君に聞く
君にわからないことを君に聞く
君がわからないから君に聞く
そうしたら少しの時間、一緒に考えられるね

夏のような春の日に
眩しくてかけたサングラス
似合うねも似合わないねも言われなくなってからが
おじさんの仲間入り

僕は少し一人で、たまに一人じゃなくなる方法を知っている
僕と君って違うよね、って思いながら、僕らって言う

僕らってさ、
まだ不器用だね

高速道路に乗って、トンネルを抜ける
まっすぐで頑丈な橋の上、大きな川を渡る
夕焼けの薄紅に、空も川も染まる
僕と違う場所にいる君を思いながら、僕らって思う
僕ら、
って思う

一人の部屋で、少し忘れかけてた歌を歌う
意味がリズムとメロディに合わせて踊る
いつかから、群青の今を思う
これは、今に捧げる歌

大きな川を渡る、みたいに
たまに手紙を書く
小さな字で、ありがとうとごめんねを書く
言葉は綿あめみたいに、ハリガネを包む
書くことなんてあんまりないんだけど
小さな字で、ありがとうとごめんねを書く


自由詩 大きな川を渡る Copyright 相田 九龍 2019-04-21 19:13:01
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