夜の散歩
印あかり


【公園】
躁鬱な白熱灯が
葉桜のささやきになだめられて
たわわに実った涙を
鳥が、祈るように啄んで
焦げ落ちた空へと死んでいった


【狭い路地】
ヨモギ色のトタンの一軒家
もやしの暖かな匂い
背筋が寒くなるほど腹が減った
左足の踵だけすり減った靴
痛々しいほどにわたしは歩いている
自転車に道を譲ると
リン、と不器用なお礼が残された


【大通り】
デパートの硝子に映る私は
あなたが見ている私と同じですか
表現の枠に噛みついて血が垂れた唇
拭った手の平に青い尺取虫
あなたが大好き
それを伝えたいだけなのに
チェーン店の明かりが連なる大通り


【帰路】
何事も
答えを出さないでいよう


自由詩 夜の散歩 Copyright 印あかり 2019-04-21 09:10:25
notebook Home 戻る  過去 未来