六十歳の定年に仕事はお払い箱にされた
こたきひろし

六十歳の定年に仕事はお払い箱にされた
定年延長再雇用は却下されて
容赦なく投げ出された訳さ

家の借金はあるし
嫁さんは体と心がどっちも弱くて
結婚当初から
俺にずっと養われてたから
今更仕事は無理だった

それでも彼女はそれなりに悩み苦しんで
仕事探しに奔走してくれた
でも世の中甘くないよ
俺と一緒にハローワークに通ったけれど
彼女の方はみんな断られた

俺は老人ホームの調理の仕事に採用されたが
四日と持たなかった
俺が持っていた料理の認識から大きくかけ離れていたから

それで近所に新設された物流センターの募集にハローワークから応募した
相談員の女性から電話して貰ったら六十歳過ぎているから無理と断られたたらしい
そこを相談員さんが推してくれた
二十五年の経験とフォークリフトの有資格を言ってくれた
それじゃあ会ってみてから考えますの返事だった

面接してくれたのは三十代位の男性でそこで二番目にえらい立場だったらしい
十分位の面接だったが採用してくれた

救われた
世の中の廃棄物になりかけた所を拾ってくれたのだから
あれから三年
俺はまだそこで仕事している
定年のない会社だから

低所得者は
死ぬ直前まで働かなければ生活できない
アジアの島国
にっぽんに万歳は
しないよ


自由詩 六十歳の定年に仕事はお払い箱にされた Copyright こたきひろし 2019-04-20 06:53:45
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