息づく
かんな

やさしい
やわらかいものばかりに
触れてしまっていると
ひりひり、ひり
とした痛みのあるものを
抱きしめたくなる
不安や安心やそういったことに
関係するのかもしれない

宇宙や星や月や
そらのものに憧れるのはきっと
足もとばかり見つめる日々に疲れている
ひとが地上に多いから
どうしてどうして生きかたは単純で
こたえは明瞭でないのだろう

毎日ことばを連ねたら
先に見えるような真実にだまされてしまう
わたしもきみも、あなたもかれも
誰も彼も、せいかいが好きだから
間違うこと正しくないこと痛みをともなうこと
そういう怖さを知ってしまった

漢字にするのがおそろしい
平仮名でごまかしてしまうことに
ただ慣れてしまって
もう想像してほしい
書いていること呟くこと伝えることすべて
隠されたものばかりあって
どんなひとも嘘をおぼえてしまっている

きよらかな
きれいなものばかりに
触れてしまっていると
ひりりりひり、ひりり
胸にこころにその内面にただ痛みが
走って駆け巡って辿りつく
逃げられないことに安堵する
にんげんも多いのだ

もう終わりにしたい
涙をながしたことを
泣いてしまったと表すこと
上を向いたり下を向いたり
忙しなく騒がしくゆとりのない日常に埋まり
その中で生きよう生きようと呼吸する
まわるまわるまわる循環するきせつ

ただおそらく気づいている
抱きしめたひとのこころの痛みを
抱きつづけたことばのしなやかさを
息づくことのたいせつなたくさんの意味を



自由詩 息づく Copyright かんな 2019-04-18 09:30:30縦
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