まにまにダイアリー①いつまでも、どこまでも
そらの珊瑚

給湯室で、連休はどうするの? と聞かれた。A先輩は彼氏とハワイへ行くらしい。A先輩の「彼氏」の発音は末尾が下がっていて、真面目そうな彼氏だと思う。
予定はまっしろだったが、かわいそうな後輩だと同情されるのも嫌なので
「ホワイトアスパラガス諸島に行くんです」と答えた。なんでそんな口から出まかせを言ったのか自分でも当惑しながら。

いつまでも、とか、どこまでも、とか、そういうのだって嘘だ。いつまでもそばにいるよ、と言いながら、いつのまにかみんなどこかへ消えてしまう。大人になれば、みんな知ってる。

ビルヂィングは明るい墓石
アンテナは遠い島の歌を傍受する

針金を通した強化ガラスは。今日も律義に外の景色を菱形に切って映している。どこまでも青い空、という言葉が浮かんできたので、なぜか泣きそうになった。嘘だとわかっていても、私はこの現実のなかで生きている。

ポットが沸騰を止めて、おとなしくなる。ちゃんと帰っておいでよ、と言ったA先輩の眼鏡は少し曇っていた。


自由詩 まにまにダイアリー①いつまでも、どこまでも Copyright そらの珊瑚 2019-04-17 12:23:38縦
notebook Home 戻る  過去 未来