言葉想詩
亜綺梛響

言葉が散って逝く。
吐き捨てられて逝く。
書き捨てられて逝く。
見放されて逝く。
言葉が落ち葉のように降り積もって逝く。
地に落ちて折り重なった言葉が意思を喪失しながら弄ばれて逝く。
ある言葉は風に吹かれ、
ある言葉は凍てついて、
ある言葉は燃やされて、
ある言葉は微塵に砕かれて、
ある言葉は踏みにじられて、
ある言葉は忘れ去られて逝く。

いつかの日、
詩人が解体されて詩へと分解されたと気が付いた時、
分解された詩は言葉へ解体され、
解体された言葉は言の葉へと散らされていった。
散らされた言の葉は再び象形へと回帰することは許されず、
揺らめきながら個としての点と線へと喪失してゆくだけだった。
絶望的な喪失の嘆きの中で点と線は回顧する。
象形から言の葉へと至った時、己はどれほど純粋であったのかを。
言の葉から言葉へと昇華した時、己はどれほど詩であったのかを。

やがて回顧は夢想へと変貌する。

もう一度象形へと至るのだ。
もう一度言の葉へと至るのだ。
もう一度言葉へと至るのだ。
もう一度詩へと至るのだ。

夢想の中で待ち侘びる。
もう一度詩人へと至るのだと待ち侘びる。


自由詩 言葉想詩 Copyright 亜綺梛響 2019-04-17 01:26:33
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