鬼と桜
……とある蛙

駅から続く桜並木
だらだら坂のドン詰まり
君がいた病院があります。

桜並木の木の下には
死体と狂気が
埋まっています。

もう四年も前の想い出ひとつ
今年も桜の木の下で
散りゆく花弁ひらひらと

桜並木の真ん中を
足早にすぎる風一陣
鬼になった君の風

桜並木の木の下には
別れの想いが
淀んでいます。

もう四年も前の想い出ひとつ
今年も桜の木の下で
散りゆく絆ひらひらと

桜並木の真ん中を
人の間に冷たい風が
鬼になった君の風

見上げる花は真っ盛り
冷え冷えとした足元ばかり
冷え冷えとした君との思い


桜並木の木の下には
積み残した恨みが
沈んでいます。

今年も桜の木の下で
届かぬ想いひらひらと

桜並木の真ん中を
空しい時間が吹き抜ける
鬼の風も吹き抜ける

見上げる花は真っ盛り
涙にぬれたこの地べた

桜並木の木の下には
人の心の奥底の
鬼がひっそり佇んでいます。


自由詩 鬼と桜 Copyright ……とある蛙 2019-04-09 14:46:44縦
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