惑星にいる
阪井マチ

自分のことをトーマスと呼ぶ少年の体は青く粉を吹いてた

転職しても家事の基本は身に付かず二階の窓の日射しまぶしく

私は大丈夫になると文字が読めるシミュラクラ楽園の地図は模様

両足の無いものに包まれてひるがおの実に色がある

カフェ&ダイニング私の部屋にいてもカフェ&ダイニングをうたう私の部屋

流した後の水の揺らぎが好きで世界中に喫茶店あまねくある世界

惜しみない拍手を浴びたオルガン弾きそこには誰の死も無いけれど

あなたのことを気にして跳んだコオロギがわたしのことを気にして落ちた

花の名前を教えてくれた人は亡く竜胆の花はどれなのか

私の内に見えない糸が漂ってそれを吸い込めばもう奪われない

先輩は困った顔で笑いました当事者だから両手をあげて

葉の色に染まる我々の言葉は気づかない内に壊れました

私は未ださむざむとした恍惚を知らずに請求書を読んでいる

この天体で産まれた人がこんなにも怯えてしまう窓外があり

部屋という名前をやがて奪われてあなたがそっと惑星にいる


短歌 惑星にいる Copyright 阪井マチ 2019-04-07 01:20:13
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