瞳の色
kawa

僕はつづけた。

………というわけで、クジラの瞳の色がネイビーブルーであるのは、
空の色を吸収して、また放射しているからなのです。

傍らにいる誰かが、うなづきながら聞いていた。
僕たちは、鳥も鳴かない湖のほとりで
石段にすわり、霧を眺めていた。
このまま、何かを待っている必要があるような
そしてそれは、そんなに先ではないような気がしていた。

不意に、今の僕の説明は全くの間違いであったことを思い出した。
違う。何を言っているのか。
クジラの瞳は北極圏の深海の色だ。
そして、鳥の瞳が黒いのは、宇宙の色を写しているんだ。
獣の瞳の色が※△◯なのは、⬜︎※△であるからで……
少し混乱しながら記憶を混ぜ返していると

ヒトの瞳の色は?

と声がした。振り向いたが誰もいない。僕はひとりだった。
呼吸して、もう一度湖を眺めた。
頰づえをつく。
人間の瞳の色が、様々である理由。
霧を眺めながら、それを考えていた。



自由詩 瞳の色 Copyright kawa 2019-03-27 17:32:42
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