壁の焼跡
帆場蔵人

長方形の焼跡は億年の時を経て
掘れば首長竜の化石が眠っていて
あなたの声も眠っているだろう

倦んだ日々に
燃え尽きていった
古い絵葉書
切り抜きの地図
杭州西湖へと
引かれた
朱墨の線上の
指紋の顔も忘れて

座標を失い
突き立てられた
ピンは
壁に
刺さったままで
春の陽を待ち
浴びている
わたしは
ピン

冬を刺繍された蛹

長方形の焼跡からのびゆく
春の葉脈に根をはる蛹
その根元にはさざめきながら

いつかの
声の化石が
瑞々しく
崩れている


自由詩 壁の焼跡 Copyright 帆場蔵人 2019-03-26 22:27:04縦
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