緑の地獄
中原 那由多
右手で毒を掬い上げ
左手、熱を掬い上げ
両手で愛を掬い上げ
零れる詭弁
滴る幻
葉緑体がひしめき合いその隙間から染み出すモザイクは朝の訪れであるかのようにゆっくりと
髑髏を
浮上させる
あれが
こっちを
覗き込んでいる
覗く髑髏に覗かれながら
髑髏に構えた指鉄砲
(発砲音)
みどりがまいちる
瞼の
上の
ニキビ
が
潰れた
ような
肌触りが心地よい
枝分かれしたシナプスの
一本一本に巻き付いた
蛇のような違和感を
捻り切ってみれば
板チョコを割ったかのような
軽率な喘ぎ声がする
痒い
と
右手は首を掻き毟り
痛い
と
左手は首を抑え込み
ぬめりを帯びた背中からは
潰れた蝉の抜け殻の破片に
くすぐられているかのような
歯痒い感触と共に
赤い棘が生えてくる
(四秒間の沈黙)
心臓が、飛び出す
心臓が、飛び出す
急所への一撃
膝から崩れ落ちながら
直立不動の本音へ向けて
負け惜しみ
心臓が、飛び出す
心臓が、飛び出す
心臓は、飛び出さないから
緑の地獄で右往左往
目を瞑ったまま
音の鳴る方へ行けば
ーーー落雷
その先に吹く風からは
春の匂いがする
自由詩
緑の地獄
Copyright
中原 那由多
2019-03-26 22:01:06