ひかり ふるえ
木立 悟





匂いの無いうたから
花は聞こえ来る
雨の針 雨の針
ひとつひとつに
霧を閉じた粒


さくさくと喰む曇の
ゆるやかな揺れゆるやかな揺れ
水が到く前の
手のひらの静けさ
集めたものを返した後の
音の冷たさ


空の大きさの
双つの蜘蛛の巣が重なり
星をずらし
星を増やす


氷のはざまのまだらな夜を
踏みしめながら歩くとき
曲がる月の曲がる色
何かを孕んだ淡い色


常に震えている空の
ほんの少し横を見る雪
重たく
静かな闇


冬の鳥の会話
夜の屋根を流れ
星はひとつ 波に浮かび
新たな行方を指し示す





















自由詩 ひかり ふるえ Copyright 木立 悟 2019-03-26 15:19:23縦
notebook Home 戻る  過去 未来