目蓋の裏のみな底
帆場蔵人

とじた目蓋の裏に海がさざめいていて
丸めた背中の上を野生の馬たちが疾る
寝息を受けて帆船が遠くへ遠くへ

あなたの存在そのものが夢のよう
そんなふうに思えたことがあった

ひとりでない、なんて夢のようなまぼろし

いつの夜だったか
真夜中の坂を行進して
朝とともに転げ落ちた
やはりひとり、で
丸まって眠る子ども達の
抜け殻を見下ろしている

見上げれば星の群れが
ひとつひとつ、違う速度で
羽ばたき、電線が波うつ

海はなく、野生の馬たちの嘶きも遠く

ふたりの抜け殻は
帆船の一室で
手を繋いだまま
遠く 遠くへ
目蓋の裏 みな底へと沈み

坂の下から
朝の方角へ

歩みさるひとびと


自由詩 目蓋の裏のみな底 Copyright 帆場蔵人 2019-03-25 01:45:05縦
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