ありえない、くそったれの夜にも
秋葉竹


この忌々しい
憎しみに満ちた
いつも苛立っている
人生を棄てたい夜もある。

そっと、だ。

人も、仔猫も、眠るコタツで
ここからはじまる春の風に寂しさが
青ざめていくのだとして。

信じてあげなくてはならない
それは夜に生きる天使を
その目で優しくみてあげなくては、
ならない狂った嵐一過の自然の哀しい裏切り、
に抑えこまれた
甘いハチミツの香りがする夜のこと。

そんな疚しい幸せならば
義務感にその身を削っても
絶望感に心を凍らせても
体を他の人に預ける信頼が
大好きなんだと言う嘘と向かいあえない


なんて、優しく響くんだ


誰の声も優しくしてくれているんだと気づいた

その言葉に勇気づけられたし
それでも真っ直ぐな、
心破れた哀しみを歌ったし
これでもう、そういうふうに、
悪びれずに、悩まずに
眠るね?

そしてこの、底のない暗闇の部屋で眠るのだ。
仔猫の、震えるヒゲほどに、小さな寝息を立てて。

そういう風に
すべての人を誤解し、
誤解され、
あまねく世界のことを
そういうものとして
感じられるのだ。


だからそこからはじまる
スイートで
キュートで
ハニーな
総じて享楽的な
白い手袋の手まねきを
艶めかしいと思ってしまったのだ。


と思って
新しい正義を作りあげて
心眠らせベットに眠らせ
これでもう、そういうふうに、

悲しみを感じたのは

人生のこの忌々しい風が強くなったせいなのだと
真っ正面からの、嘘の笑顔が見られたせいなのだと


感じたのだ、悲しみを。



この、ありえない、くそったれの街にも
こころまで、空っぽの、優しさの風がふくんだろう。







自由詩 ありえない、くそったれの夜にも Copyright 秋葉竹 2019-03-07 23:32:12
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