優生学
紀ノ川つかさ

君の手には千円札が一枚ある
それは誰かにあげるための千円だ

千円あれば 貧しい五人家族が
一日生き延びられる
子供達は学校に行き
親は仕事を探しに行く

千円あれば 動けない一人の障害者が
一日生き延びられる
ヘルパーさんが来て
食事を作って食べさせてくれる

さて どちらに千円を渡す?

五人対一人
数が多いから
五人の方に渡すといいのかな?
そう考え始めた時
君の長い旅が始まる

それは長い歴史の中で
誰も目的地にたどり着けなかった旅だ
時に誘惑に負け
時に罠にはまり
時に自分が人間であることも
忘れてしまう
それは長くけわしい旅なのだ

チャールズ・ダーウィン
フランシス・ゴルトン
チャールズ・ダベンポート
アルフレート・エーリッヒ・ホッヘ
エルンスト・リューディン
谷口弥三郎
そして
植松聖

その千円を
どちらに渡すのが正しいのか?
何を基準に選ぶのか?
選ぶことなどできるのか?
この問いはそもそも正しいのか?
この問いが間違っているのなら
どこが間違っているのか?
そしてこの問いと同じことが
現実に起きることはないのか?
君の長い旅が始まる

人々に告ぐ
このたった一つの問題を解き明かせ
もし君が世界中すべての人の
幸福を願うなら


自由詩 優生学 Copyright 紀ノ川つかさ 2019-03-07 23:05:23縦
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