捕食
チアーヌ

わたしは大きな空を飛ぶ
見えているものは何も無くもしもぶつかれば死ぬ
背の高い草は鋭い葉先を持ちわたしの肉を突き刺す
この程度では死なないけどまもなく卵がわたしの胎内で増殖するから
うえええええええええええ
ああ産まれそうなのは実はわたしの卵ではないのかもしれない
いつ産み付けられたのか
わたしの口から出てくる小さな芋虫わたしを食い破って
一本
二本
触角が千切れていく
空に

土に住み暗闇を這い回る
わたしの形をわたしは知らない
柔らかく暖かい胎内に包まれた記憶
流れるようにたくさんの足で潜り込むねぐら
匂いがするほうへいけば
ぶちゅぶちゅ音を立てて何かを食べている黒いもの
わたしは迷うことなく近づいてそいつを飲み込む
ぶちゅぶちゅ音を立てて
そろそろ卵を産まなくちゃいけないから
ぶちゅぶちゅ
ぶちゅぶちゅ
ぶちゅ
ぶちゅ
ぶちゅ

出会いは必然で
どこかでわたしはあなたを知っている
わたしは大きなお腹を抱え
秋の空の下で捕食を続ける
空を飛ぶやつらは食べるところが少ない
動きの鈍いヤツは片端から捕まえる
足りない
足りない
足りないよう
もっともっと食べなくちゃ
わたしは出会いを待っている
わかっている
あなたが必ずわたしの元へ現れること
ほら
来た
あなた
あなた
わたしを見つめてる
わたしの大きなお腹
ねえもう日が暮れるわ
寒くなるわ
毎日
少しずつ
わかるでしょ
あなたはわたしに近づいてくる
そうだよ
僕だよ
知っているよ
君は僕を求めてる
どうか頭から
わたしの腕があなたを抱きしめる
ぐちゅぐちゅ
ぐちゅぐちゅ
ぐちゅぐちゅ
ぐちゅ
ぐちゅ
ぐちゅ







おはよう
いってらっしゃい
愛してる




自由詩 捕食 Copyright チアーヌ 2005-03-29 18:12:45
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