やわらかいおり
渡辺八畳@祝儀敷

あまりの寂しさに
体からスライムを出せるようになった僕は
だれも覗かない自室の中で強張ると
無色透明な粘液に包まれる

まだらに入った気泡になんだかやすらぐ
必然性を含有していないからだろう
生物がいたことのないアクアリウム
地球みたいにぷるぷるゆれている

味も臭いも経験値もないから責めてこない
一切の記憶がこのスライムにはない
ひんやりだけをこころに据えて
欺瞞だとしても浮いていよう

寂しさの代償によって
僕は守られていく
ねとねとしているけれど
くっつきはしない



自由詩 やわらかいおり Copyright 渡辺八畳@祝儀敷 2019-02-18 23:30:42
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