手を伸ばす
水宮うみ

ぼくの言葉が、謎めいたものではなく、理解できるものとして、きみに届いたらいいなと思う。
できれば美しい形で。
ぼくはきみに理解されたいし、できうる限りきみを理解したい。
誰かが誰かへ「あなたには分からない」と言うとき、その誰かは「あなたには分からない」と感じていることを理解されたがっている。
言葉を発するということは、理解を求めるということだと思う。

ぼくたちは完璧に理解し合うことはできない。自分自身すら理解しきれないのだから当然だ。
でもそのことを、悪いことだとは思わない。
だって全てを理解し合えたら、議論をする理由が、言葉を発する必要がなくなる。
分かり合えない悲しさは、分かり合える喜びのすぐ隣にいる。

隔てられているぼくたちは、愛する誰かへ手を伸ばす。
ぼくはその手を、美しいと思う。


散文(批評随筆小説等) 手を伸ばす Copyright 水宮うみ 2019-02-16 07:25:53
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