まるで人生って!
立見春香


まるで白昼夢だ
満月の頃
青空に黒い月が浮かんでいるように
胸には小さな宇宙のような穴が開いていて
埋める星の金平糖を探し続けていた

潮の香りの染みついた
大きな河の静かな照り返し
目的もなくひとり川面を眺めて
あくび
あくび
あくび

鉄の交差する
橋の運命の一点で
その震えて泣いている
仔猫と出会ったんだ

夏が終わっても

髭をビンビンと過敏に震わせて
花火を懐かしんで探しているように
太陽を暖まるためみたいに浴びようとして
尾を口に含みながら
丸まった足をあしたに向けて
あのだれも知らない花の名前を探すように
目を細めていた

野生は
すっかり痩せこけて
でもね
ちゃんと爪も牙も折ってなかったんだ

でもね
猫生(人生じゃないよね?)に
合格しようと濡れた目を思慮深げに
可愛く閉じたり薄く開けりして
だれかが置き去りにした
丸みをおびた白色の小さなバスケットで
そっと生きようとゴロニャンコ
ニャン
ニャン
ニャン

仔猫いっぴき
満月に泣く
胸には小さな宇宙のような穴が開いていて
埋める星の金平糖を探し続けている
人生みたいだ
まるで波瀾万丈系?

猫の鳴き声の染みついた
小さな白いバスケットのなか覗きこみ
それにも飽きたら
青空と
目的もなくひとり川面を

そして
それにも飽きたらまた

大きな白昼夢を待って
とても可愛らしい興味を持って
ずいぶん長い時間
飽きもせずに彼女が髭を引っ張るのを
ボーっと

ボーっ
ボーっ
ボーっと
汽笛を鳴らす
沖合に傾きつつも弧を描く船を
眺めながら仔猫があしたの橋を渡ると信じたのだ
私が夢の虹をよじ登るのと同じくらいにね

そこだけは
キリッ!
っとね








自由詩 まるで人生って! Copyright 立見春香 2019-02-16 05:21:36
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