猫田川漱石にゃ先生の活動復帰に寄せて
パン☆どら

「猫田川漱石にゃ先生の活動復帰に寄せて」     文:山本山パンダ




「吾輩は乾物にゃ。名前はまだないにゃ。確か以前はカツオという魚だったにゃ。」

という出だしで始まる猫田川漱石にゃ先生の有名な小説「吾輩は乾物にゃ」。

2項目で猫に食べられ、突然話が終わるという衝撃的な展開に、当時の読者は度肝を抜かれたという。300項のそこそこ厚みのある本であったが、ほとんどが白紙であったにもかかわらず、当時としては異例の500万部を発行した。もちろん3冊498円という異例の安さの影響もあったであろうが、それを差し引いて考えてもこれまた度肝を抜く記録であった。しかも書店ではなくスーパーの野菜売り場に山積みするという、今では考えられない販売方法も話題をさらったものである。そのため誤って購入した主婦が返品を要求する事例が多発したり、ばら売りをしろと苦情が寄せられたりと、社会現象まで起こした問題作でもあった。

残念なことに、文壇からの評価は決して高いものとは言えなかった。厳しい批評で有名な小林ひでーよ氏はやれ大学ノートにしては高いだの、白菜のつもりで煮てみたが全く歯が立たなかっただのと大いに非難されたことは記憶に新しい。

猫田川先生はこの評価に肩を落とされ、作家活動を休止したのは全く残念なことであった。しかし<海のものとも山のものとも出版>が「吾輩は乾物にゃ」によって経営を立て直すことができた恩義を返すため、氏を記念して「猫田川賞」を設立。以後若手作家の登竜門として不動の地位を築いている。

さて、長い間沈黙を守っていた猫田川先生であるが、この度ネット詩人としてご活躍されることになった。わずか2項目で作品が終わることに批判的であった文壇とは一線を画し、ネット詩という範疇で作品を発表されることに関しては、ご自身も多くの葛藤を抱えられたと心中を察するが、何がともあれあの偉大な作品を生み出した先生がまた作品を世に出されることは我々にとっても大いに励みになるというものである。

思えば私も、フォーク歌手として活動を続けるのか、あるいは作家として活動の場を変えるのか悩んだ時期があった。心無い週刊誌に「パンダ困っちゃう」との見出しですっぱ抜かれ、腹立たしい思いもしたものである。しかし長編的短編小説という新たな分野を開拓した先生の力作に大いに発破をかけられ、ついに作家になることを決断したことを昨日のように思い出すのである。

現在、猫田川先生は現フォ王国にお住まいになっておられるらしい。近々先生の作品が掲載されるとのことだ。先生のご活躍を大いに期待したい。


散文(批評随筆小説等) 猫田川漱石にゃ先生の活動復帰に寄せて Copyright パン☆どら 2019-02-15 21:10:36
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