ハチミツ
秋葉竹


タブレットを口へ
冷たい柑橘の匂いが鼻腔を満たす
雪の爪が
空の扉に描く

生まれ故郷の風景、あのころの
笑顔………

オレンジ色の陽射しが
寒くて寒くて震えているこころを
田園の暖かい日に連れて行ってくれる


《微笑むつまとふたり読む詩は、ハチミツ》


あいかわらず
愛情のわからないひとだな
手を握るだけで悲しみも消えるというのに



祈ります
だから今なら
葦原の湖のほとりで
ひとり
ひざまずき祈ります

このあとなにがあっても
このあと少しでも
目を見て喋ってください


学生の頃
目深に帽子をかぶっていたなぁ
いつまでも苦しくて
広い世界から
視線を隠していた
けれどそんなことをしてもダメで
なにも考えないで
ちゃんと口に出してもあげられなくて
そういう風にして
しをおもいとどまったわたし今なら
こんなにはっきりとわかるんだ
「いまはしあわせ。」と



口に出して伝えているのは
だれに?

人生って
楽しむために、生きてんだって、さ。

って、いってくれたひとに。






自由詩 ハチミツ Copyright 秋葉竹 2019-02-09 08:36:33
notebook Home 戻る  過去 未来