小詩
メープルコート


【1】
 黎明の森に緑がさらさらと揺れている。
 心の奥であぶくが湧いている。
 しまい忘れた情熱が青く光っている。
 誰かの夢と同じように。

【2】
 闇の中を蠢いていた不安は、朝露となって葉から落ちた。
 終わりとみるか、始まりとみるか。
 流離う人々の足音は群青の中に響き渡り、
 私を仲間に入れようと手招きをしている。

【3】
 愛を失いそうになった時、私は祖母の万年筆を見る。
 優しさを忘れそうになった時、私は祖父の面影を探す。
 すべてが苦しくて堪らない時、私は妻と子供の寝顔を見る。
 すべては静けさの中の美しさで満たされる。

 


自由詩 小詩 Copyright メープルコート 2019-02-09 06:15:01
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