梯子
ふるる

私たちは落ち着ける場所を探していた、
静かで、薄暗くて、清潔な場所

それは売りに出されている、と試験監督は言ったんだわ
君たちに買う資格があるかどうかいまから試験を行う
ただし設問も答えも自分で考えるようにと

今は右(自動的な)や左(他動的な)に別れている道だが
俺たちは試さなければならない、
と誰かが言った

みんながしんじてる神さまはこんな薄緑した薄っぺらい四角の中にいるの?と幼い子が聞いた

バスガイドが白い手袋を蝶のように翻して右手をご覧下さい、
みな一斉に見た。
絶壁に向かい右横移動するバスの進行方向を

一度受けると決めたら降りるすべはない、と試験監督は
少しいらいらしているようだった
誰も設問の作り方を知らなかったしそれは彼も同じだったから

誰が一番悪いか決めたらいいと思わない?とおんなのひとがいうのでみんなでうんといっておんなのひとを指差したのでバスが止まったの

彼女は冬の夕焼けに染まる赤いかかとを鳴らし降りた
断崖からは遠ざかったけれど
一人で歩くのはさすがにきついから
ヒールを脱ぎ捨ててこれからは自由
空き缶集め

あなた方も部外者ではないのに
まるでわかってはいないで
黄色やハッカ味のあめちゃんをあげたりもらったりするだけ
時計台を過ぎたら

バスに搭載された人工知能を信仰しようと彼らは言い出して
(そうなるのは時間の問題だった)
なぜなら人工知能は絶対に間違えないから
なんて間違いをすでにおかしているのだがかわいそうだから黙っていようと人工<削除済み>は結論済み
彼らの幸せを祈る機能しか役立つものはないのだが
いったい誰にどうやって祈る?

とりあえず前の席にちょこんと座っている曇天の晴れ間の
天使の梯子みたいに聡明なあの子にあめちゃんを
君はうちわで自分をあおげるし
雑巾がけしても骨折はしない

つかの間
それはとても大切な問題に思えたし
誰もが花びらに落下し続ける蝶よりも正解に
答えを導けると思えた



自由詩 梯子 Copyright ふるる 2019-02-05 00:53:09
notebook Home 戻る  過去 未来