編み直される時間
ただのみきや

黒い森に満ちてくる水の囁き
乱立した死を足元から咀嚼して
本能すら気づかないまま飼い馴らされ
鳥も猿もみな魚になる
愛の骸の揺籃は腐った銀河のよう
崩れ去って昼も夜もない今
柔らかな時計の呼気と吸気の間
繰り返されることで刷新される
変わらない何者かの
仮面から伸ばされた
真紅の舌が内から裂いて往く
汚れた産着で幾重にもくるまれたもの
染みのような影すらなく
寄生された蛹のように食い尽くされた
愛くるしい木乃伊の面影は
春の日中の陽炎のよう
最初から無かったものの存在を告げていた
欠けたものだけが放つ鋭い光彩と
深い陰影だけが
わたしを立ち止まらせる
一滴の水を抱いて沈んで往く青いままの一葉
ぼんやりとした思考の彼岸
すでに死者となって



             《編み直される時間:2019年1月27日》







自由詩 編み直される時間 Copyright ただのみきや 2019-01-27 10:50:37縦
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