赤い月のシグナル
秋葉竹


《月の石》のない月は赤い
年に一度は
君を守るためにすべての言葉を破却する

歌っている
街の灯の歌
それは
捨てられないミッシングリンク

骨を骨として鳴らし続けるための

好きな者の髑髏を埋めたら
あたしんちの庭の純音の門を取り壊した
澄んだ空気が息をひそめる
小さな世界の雪景色

どこに行くのも自由だと
吹きつける風と雪がエントロピーを解放する
痴人の方向が艶めかしい目の色を思い出したなら
その紫色の瞳の向かう先は
もはや悲しくはない
長いお別れしかないのかもしれない

《月の石》はこの世界にある

ささやかな奇跡の一粒が転がる
毒を散りばめた言葉さえ
破却する
コモンセンスをまろやかに飲み干す
あたしは
今夜も眠れない
そんな奇跡を認めない
どんな風にも吹かれない
苦笑いをしながらふと
波の音が聞こえるかもしれない
拭えない罪の心と共鳴して
あたし
たいせつなことだけ
絶対にだから生きていけると
思えるほどたいせつなことだけ
ちゃんと覚えている
失敗しない




自由詩 赤い月のシグナル Copyright 秋葉竹 2019-01-18 22:04:51
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